製造業やサービス業を中心に、現場での設備点検や保守作業は依然として紙による報告書運用が多く、記入漏れや情報共有の遅延が課題となっています。
近年では、タブレットとクラウドを活用した点検管理システムにより、報告書のデジタル化・承認フローの効率化・データの二次活用が進みつつあります。
本記事では、紙中心の点検業務をどのようにペーパーレス化し、業務効率と顧客満足度を高めるか、その仕組みと導入ポイントをご紹介します。
また本記事は社外の顧客向けの設備点検管理をベースに紹介していますが、自社の設備点検の運用にも流用が可能な仕組みとなっています。
紙中心の点検管理運用の問題点
点検報告書が紙中心の運用の場合、どのような問題や課題があるのでしょうか?お客様よりヒアリングした内容を抜粋してご紹介します。
点検報告書の記入ミスや漏れ
導入した設備の機種の違いやお客様に合わせた仕様の設備の場合、統一された点検項目以外にそれぞれ異なるチェック項目が存在することもあります。
記述必須の項目や関連性によって数値記載など点検項目は様々です。
点検報告書の記載が複雑化するとヒューマンエラーも生じ、記入ミスや記入漏れも発生してしまいます。
点検報告書の二次的な活用が未達成
点検が完了した点検報告書は、そのまま用紙で保管しており点検データの蓄積がされておらず、集計データや分析資料、次回訪問タイミング、部品の取り替え情報として二次的な活用がなされていませんでした。
また過去の点検作業を調査する場合、データが関連付けて保存されておらず、検索や抽出の調査作業に多くの時間を割いてしまっていました。
営業側と技術側の連携ミス、次回訪問忘れ発生
定期訪問や訪問予定、訪問結果の情報共有が電話やメール、WeChatでの連絡となり、営業と技術スタッフの間で度々通知が行われず連携ミスが発生していました。
状況を知らない営業スタッフに顧客より連絡が入り、技術スタッフの対応内容が分からず、顧客が求める内容に回答が出来ないシチュエーションも。
顧客満足度アップと囲い込みが課題
点検で部品交換が必要と判明しても社内で情報共有されておらず、営業側で顧客状況が分からない状態となり、顧客側より催促を受けて見積もり提出や交換対応を行い顧客満足度が向上できない状態となっていました。
競合他社との差別化を図りたいが、設備機能や提示価格以外に顧客サービスを打ち出せず、設備導入・保守・部品提供の流れを社内共有化し顧客の囲い込みを実現したいが実現できない状態が続いていました。
既存の客先訪問の点検報告業務イメージ
会社によって保守点検の流れは多少違うかも知れませんが、弊社お客様の運用の流れを元にご紹介したいと思います。
なお顧客訪問の運用ではなく社内運用のみで点検システムをご利用いただく場合は、営業運用部分を省略した技術スタッフの点検作業、担当責任者のサイン、管理部門の承認、用紙保管という流れになります。
客先訪問&点検作業
技術スタッフが指定顧客に対して定期訪問、または臨時訪問の要請を受けて現場対応を実施します。訪問前に営業スタッフに顧客名・点検内容・定期または臨時の通知を行い、対応を開始します。
設備に合わせて点検報告書を確認し作業を行います。チェック事項や数値を入力し点検確認が完了すると顧客へ説明しサインをもらって作業を終えます。
技術スタッフはサイン入手後に営業スタッフへ内容報告し、部品交換の有無や臨時対応時は請求対応の依頼を行います。
事務所本部の承認作業
管理スタッフが事務所へ帰社後に点検作業内容を表計算ソフトで作成された一覧表に転記し、担当者から上司に報告し押印後、用紙の点検報告書と提出用としてPDFスキャンして保存します。
表計算の一覧表に転記したタイミングで営業スタッフに作業報告を行い、報告内容を確認し有償対応の場合は営業スタッフより顧客へ見積もり作成と提出を行います。
タブレットとクラウドを活用。点検システムの運用イメージ
顧客訪問を伴うため、点検データはクラウドサーバーで一元管理します。管理スタッフ、技術スタッフ、営業スタッフともクラウドにアクセスして利用を行います。
管理スタッフに関する点検システム運用
点検業務に必要となる管理データ(スタッフ・設備・点検フォーマット)の対象コード、点検フォーマットを登録します。
点検作業完了後、技術スタッフより点検報告書をデジタルデータで受け取り、ワークフローにて内容確認と承認作業を実施し、自動的にデータ保存を行います。
業務スタッフに関する点検システム運用
技術スタッフは定期点検の場合、システムから自動の事前通知で定期訪問日程と顧客情報と確認し、実際に現場でタブレットを確認しながら点検作業を進めます。
点検作業完了後はタブレットの点検内容を元に顧客に状況説明し、内容の理解を得られた後にタブレットにサインを記載してもらい、サーバーにデータをアップロードします。
営業スタッフに関する点検システム運用
システムから技術スタッフに定期訪問の連絡が入るタイミングで営業スタッフにも通知を行います。臨時訪問の場合は、技術スタッフが訪問先を登録したタイミングで営業スタッフにメールで連絡が入ります。
技術スタッフが点検作業を実施し顧客よりサインを入手し、データをアップロードしたタイミングで営業スタッフにも作業完了の通知が入り点検報告書の共有が行われます。
ペーパーレス点検管理システムの導入ポイント
タブレットを活用した点検管理システムを導入すると具体的にはどのような点が紙中心の手書き運用と異なってくるのでしょうか。導入時のポイントをご紹介します。
タブレットを活用した客先訪問の点検報告業務イメージ
ペーパーレス化&記入漏れミス予防
タブレットで運用となり紙による点検作業は廃止されペーパーレス化が達成されます。そのため事務所での用紙保管は不要になります。
またシステムで入力必須部分のアナウンスが行われ点検項目の記入漏れや記入ミスは予防されます。
入力データ精度向上
システム内で入力項目を判断し、必要な値は選択ボックスで指定内容を選択など作業者の支援を行い、入力データのミスや漏れの防止によりデータ精度の向上が実現できます。
点検報告書の二次的な活用
デジタル化された点検報告書は承認が完了するとサーバー内で自由に閲覧が可能となります※。
今までと違い承認後の申請書はシステム内で自動的に一覧化され、必要に応じてデータ出力が可能となります。顧客別の分析用の資料、交換部品の種類や数量など営業活動として二次利用が簡易的になります。
※権限管理により参照のみ、承認取り消しと再申請なども可能です。
デジタル承認で運用の見える化&効率化
顧客よりサインを入手した点検報告書はサーバーにアップロード後、営業スタッフや管理スタッフと自動的に共有化され、業務内容や承認申請の進捗の見える化が実現できます。
また事務所に戻らなくとも、点検報告書は管理スタッフと共有されるため、承認作業がリアルタイムに完結し作業効率化が実現できます。
タブレット点検システム導入による効果とまとめ
本記事ではタブレットを活用しペーパーレス化を実現した点検管理システムの紹介でした。
実際に導入した顧客は導入後に追加機能として、アンケート機能を搭載し技術スタッフの対応を含めた顧客の意見を担当スタッフを経由せず入手する仕組みも導入し、更なる顧客満足度の向上とサービス改善を追求されました。
また顧客点検ではなく社内利用として保全部が毎日の点検業務を用紙運用で対応していた顧客もタブレットを用いた運用に切り替えデジタル化を達成し、過去5年間にわたり用紙を保管していたエリアを廃止、調査時の効率化を達成されています。
現在のアナログで面倒な紙中心の運用でお困りの保全部担当者様、品質管理部担当者様、工場責任者様、導入検討の際は上海HSTまでお問い合わせください。