近年、中国の半導体工場では製品の微細化や品質要求の高度化に伴い、従来の紙やExcelを中心とした管理方法では対応が難しい場面が増えています。
温湿度管理、材料の誤投入防止、トレーサビリティ、設備点検、在庫管理など、製造現場ではさまざまな課題が存在し、その多くは品質や生産効率に大きな影響を与えます。
本記事では、中国の半導体工場で発生しやすい代表的な課題を取り上げ、それぞれの原因とデジタル化による改善方法を分かりやすくご紹介します。半導体工場の品質向上や業務改善を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
・半導体工場ではなぜ品質管理が厳しく求められるのか
・半導体工場でデジタル化が進む背景とは
・クリーンルームの温湿度管理で発生しやすい課題
・半導体材料の取り違えや誤投入が発生する原因とは
・顧客監査で求められるトレーサビリティ管理とは
・設備点検の紙記録やExcel管理で発生する問題とは
・半導体材料の在庫管理で発生しやすいミスとは
・半導体工場のデジタル化を進める際のポイント
・上海HSTが提供する半導体工場向けソリューション
半導体工場ではなぜ品質管理が厳しく求められるのか
半導体工場では製品の精度が高度化・微細化し、わずかな不良でも重大事故や大きな損失につながる可能性があるため、製品の信頼性を保証する高い品質管理が求められます。
微細加工化により小さな異常でも品質不良につながる
半導体は年々極小化が進んでおり、小さな異常が品質不良に直結する可能性があります。温湿度変動による「材料劣化」「寸法変化」「静電気の発生」などが品質不良の原因となり、歩留まりに影響するためです。
顧客監査や品質要求が年々厳しくなっている
1990年代半ばの自動車には20-30個の半導体利用が、2026年時点ではガソリン車で数百個、EV車で数千個と飛躍的に増加しており、使用数の増加に伴い顧客監査や品質要求が年々厳しくなっている背景があります。
自動車業界に関わらず、医療機器や産業用ロボットなどの産業機器も同様に高い品質基準が求められており、品質記録やトレーサビリティの重要性が高まっています。
半導体工場でデジタル化が進む背景とは
半導体工場では、従来の温湿度管理をはじめとした現場業務をアプリやシステムでデジタル化する企業が増えています。その背景には、紙やExcelによる管理では品質要求や業務効率の向上に対応しきれなくなっていることがあります。ここでは、実際の導入事例や現場の課題をもとに、その背景をご紹介します。
人手不足
中国の製造工場では、現場作業者の人手不足が深刻化しています。新卒採用者は工場勤務を敬遠する傾向が高く人員が集まりにくく、さらに熟練作業者の定年退職も重なり、技術継承が課題となっています。
品質要求の高度化
監査や顧客要望を受け、品質に直結するデータは、定期確認だけではなくリアルタイム監視が求められるようになっています。その結果、品質情報の管理基準も年々高度化しています。
顧客監査強化
顧客監査では保管データ類の提出資料に対して、アナログな記録方法の場合、改ざんリスクや記録情報の精度、ヒューマンエラーが生じる可能性、履歴管理の観点からデジタル化への移行を取引条件として求められるケースもあります。
Excel管理の限界
品質管理として手軽に始められるExcel管理ですが、担当者による転記ミスや記入漏れ、その他スタッフとの情報共有の遅延が発生し、24時間365日の継続監視が難しいなどの点が挙げられます。
クリーンルームの温湿度管理で発生しやすい課題
クリーンルームの温湿度管理は、製造環境に大きな影響を与えます。温湿度が適切に管理されていない場合、ウェハの寸法変化や静電気の発生など品質不良の原因となる可能性があります。ここでは、環境面と材料面からどのような課題があるのかをご紹介します。
温湿度異常が品質へ与える影響
クリーンルーム内の温湿度異常が長時間発生すると、ウェハの寸法変化や静電気の発生、結露、パーティクルの発生など品質不良の原因となり、歩留まりの低下や不良品の発生による廃棄ロスや製造コストの増加につながります。
管理対象となる材料やエリア
温湿度管理の対象となる材料として「ウェハ」「石英部品」「セラミックス」「薬液」が考えられ、ウェハや石英部品は温度変化による寸法変化、薬液は保管環境、セラミックスは熱膨張などの影響を受けやすいため、適切な温湿度管理が重要です。
製造で利用するクリーンルーム内での管理以外に、原料保管の倉庫での温湿度管理も求められます。
温湿度管理システムによる改善方法
温湿度管理システムは温湿度センサーを設置すると、自動的にデータを記録し、設定した範囲を超えた場合は異常通知メールを送信します。
24時間365日収集した温湿度データをシステムに自動保存できるため、監査対応の強化にも役立ちます。
半導体材料の取り違えや誤投入が発生する原因とは
特に半導体材料は品番違いだけでなく、同一品番でもロット違いによって品質管理条件が異なる場合があるため、正確な照合が求められます。
目視確認だけではミスを防ぎきれない
倉庫の原料ピッキングや製造投入時に品番コードやロット、使用期限、先入先出の情報確認は必須ですが、類似する品番やラベルに記載された情報が多い場合、作業者の経験や注意力に依存した目視確認ではミスを確実に防ぐことはできません。
誤投入が発生しやすい材料
半導体工場では材料の取り違えや誤投入が品質不良や設備停止につながる可能性があります。
その理由として、半導体工場ではCMPスラリー・洗浄液・レジスト・プロセスガスなど、多種多様な材料が製造工程ごとに使用されているためです。
また設備装置では、「石英リング・石英ボート・セラミック部品」の管理が必要になりますが、品番や仕様が類似しているケースも多いため、材料投入や設備への部品セットなどで目視による確認だけでは取り違えや誤投入を完全に防ぐことは困難です。
材料の取り違えや誤投入が発生すると、製品廃棄や設備洗浄、原因調査など多くの工数が発生し、生産計画にも大きな影響を与える可能性があります。
QRコードを活用した誤投入防止方法
投入やセットで利用する材料に社内共通のQRコードラベルを活用し誤投入を防ぐ方法があります。
QRコードに紐付けられた情報を活用し投入や設備セット時にQRコードを読み取り、システム上で照合判定を行うことで目視による確認方法を排除する運用です。
QRコードによる照合方法を採用すると「材料組合せ照合」「作業指示照合(指定ロット)」「投入履歴管理」「先入先出管理」など、現場の品質管理に関連するチェックを実現します。
顧客監査で求められるトレーサビリティ管理とは
半導体業界では品質不良発生時に迅速な原因究明と影響範囲の特定が求められるため、トレーサビリティ管理は品質管理の重要な要素となっています。
手作業による台帳記入やExcel入力管理ではなく、極力人の手を介在しないトレーサビリティ管理が求められています。理由は台帳やExcelによる運用は簡単に改ざんが可能でデータの信頼性を保証しにくいため、顧客より厳格な管理が求められているからです。
トレーサビリティが求められる理由
第一に、工場から出荷された製品に不良品が発生した場合、「いつ」「どのラインで」「誰が」「どんな材料を使い」製造したかを追跡し、問題発生時の原因を究明するためです。
第二に、不良品と同じロットや同じ製造ラインで生産された製品を特定し、影響範囲を把握することです。
第三に同じロットの製品が出荷された取引先を特定し、必要な製品のみを迅速に回収できる体制を構築することです。
紙やExcel管理の課題
厳格なトレーサビリティが求められる中、実際の現場管理では「用紙」や「Excel」による管理が多く見受けられます。
このような管理手法は簡易的なトレーサビリティとしては達成していますが、「改ざんリスク」「入力ミス」「非リアルタイム」「情報検索の手間」などの管理手法の課題があります。
QRコードによるトレーサビリティ管理
誤投入管理で紹介したようにQRコードを用いたラベルとハンディターミナルを利用すると、スキャンするたびにデータを自動保存できるため「履歴管理」と「リアルタイム収集」に適しています。
またQRコードに紐付けられた品番コードやロット情報を活用することで、品番単位のロット情報の管理が実現できます。
システム内で保存したデータはシステムの参照画面で条件付き検索、条件付き出力など必要に応じた検索や集計、データ分析が可能となり、不具合発生時に対象ロットを迅速に特定できるトレーサビリティ体制が確立します。
設備点検の紙記録やExcel管理で発生する問題とは
設備点検の用紙記録やExcel管理では、属人的な対応になってしまい、均一的な保守点検の実現が難しい部分が問題となってしまいます。
紙管理で発生しやすい問題
用紙を用いた設備点検では、点検必須項目の記入漏れや記録ミス、第三者が記入文字の読み間違いの発生、点検した用紙の保管負担などが発生し、点検データの一元化、他のスタッフとの情報共有が難しい部分があります。
また予防保全の観点からも、次回点検の日程管理が難しい点も挙げられます。
設備停止による損失が大きい
設備停止後に部品交換や対象場所の修繕を実施すると、生産計画に影響を及ぼし生産再開までの時間が長くなるほど、損失も大きくなります。
部品交換は社内に部品在庫があれば対応時間も短く済みますが、在庫が無い場合はエア便などを使った緊急取り寄せ対応の発生、部品供給が難しい場合は部品供給まで生産停止を余儀なくされ、生産の目処が立たなくなる可能性もあります。
修繕作業も工場休暇日や生産停止日など事前に計画を立て作業を実施することで、予防保全の観点から「炉」「真空設備」「チラー」など設備の安定稼働につながり、イレギュラーな設備停止のリスクを最小限に抑えることで機会損失の発生を防ぐことが可能となります。
タブレットを活用した設備点検管理
各設備で異なる点検作業をタブレットに表示し、必須項目などは警告メッセージを表示することで点検作業を標準化し、異なるスタッフが対応しても同じ作業結果が出るような管理を実現します。異常発見時は異常箇所の写真撮影もできるため、見た目にも分かりやすく問題箇所をお客様に説明ができます。
タブレットに記録された点検結果はネットワークを通じて、点検システム内部でリアルタイムに共有できます。
過去の点検結果はシステム内部で保存されており、異常履歴の一覧表示や条件を指定したデータ抽出、過去の点検履歴の確認も行えます。
また設備単位、設備交換部品単位に次回点検保守の日程を設定できるため、予知保全の観点からも安定稼働の実現に一役買う仕組みとなっています。
半導体材料の在庫管理で発生しやすいミスとは
製造工程の上流となる材料在庫の管理精度を高めることで、それ以降の工程で発生するミスを最小限に抑えることが可能です。そのため材料の在庫管理で生じるミスを少なくすると製造工程の効率化につながります。
発生しやすい在庫管理ミス
在庫管理で発生しやすいミスとして指定品番のピッキングミス、ロット違いの出庫、先入先出(FIFO)のルールを守らず出庫してしまうことなどがあります。
品番コードは15-20桁など桁数が多く、表示している文字も小さい場合もあり、O(オー)と0(ゼロ)など、間違い易い文字の組合せもあります。
同じ品番の材料が倉庫に散らばって保管している場合、ピッキング時に誤ったロットや新しい製造日の材料を誤って持ち出してしまう可能性があります。
半導体材料特有の管理項目
材料をピッキングして次の工程に搬送する際に、払出し指示書や製造指示書に記載されているロット番号が合致しているか、指定がないもののFIFO(先入先出)に間違いが無いか、ピッキングした材料の使用期限が過ぎた品ではないか、ピッキング作業時に確認をする必要があります。
また半導体の材料によっては冷蔵・恒温・常温など保管先の温度管理や保税品・非保税品の区分管理が必要になるため、入庫時に適切な保管場所や保管条件で管理する必要があります。
このような入出庫やピッキング時に材料を移動させる以外に、目視でチェックを実施するため、ミスや漏れが発生してしまうので、システムで厳格な管理が重要となります。
QRコードとハンディターミナルによる在庫管理
使用する材料に統一の「材料ラベル」を貼り付け、ラベルにはQRコードを付与して管理を行います。
QRコードに紐付けられた情報として、品番コード、ロット番号、保税区分、使用期限、倉庫区分などを管理します。
QRコード付きの材料ラベルとハンディターミナルを利用し、入出庫や棚卸しの作業時にQRコードをスキャンし、先入先出やロット、保税エリアなど管理上必要なルールをシステムで判断し作業スタッフを支援し、作業効率化と在庫管理精度を向上させます。またシステムで管理することで在庫差異の早期発見や棚卸時間の短縮にもつながります。
半導体工場のデジタル化を進める際のポイント
半導体工場のデジタル化を進めるポイントとして、QRコードを印刷したラベル、QRコードを読み取るスキャナなどハード機器、既存設備の連携などソリューション導入のポイントを紹介します。
現場運用に合わせた仕組みを選定する
本記事ではQRコードとハンディターミナルを活用したソリューションの紹介が多いですが、現場によっては有線スキャナや指や腕に取り付けるバーコードスキャナを利用した運用など、現場スタッフの操作面やお客様の要望面を考慮して改善する仕組みの選定が必要となります。
QRコードやバーコードを活用する
デジタル化を進めるうえで重要なポイントの一つがQRコードやバーコードを用いた運用です。低コストでありながら有効な業務改善が達成できるのがバーコード類を使ったソリューションです。
バーコードを利用することで手入力作業の削減、入力ミスの排除、作業効率化とアナログ作業では達成が難しかった業務トラブルや改善目標を達成でき、収集したデータ類の二次活用も可能となります。
既存設備との連携を考慮する
お客様から、稼働中の設備の設定値をシステムと連携したいというご要望を伺う場合もあります。
その際は初回システム導入時に連携が必須なのか、システム稼働後の連携可など設備とシステムの連携タイミングの確認や、設備側にデータ連携が可能なPLCなどのモジュールの有無を確認します。
また設備メーカー側にPLCを介した顧客要望のデータ連携の可否の確認などヒアリングを実施の上、連携対応の可否をお伝えします。
投入時の材料のスキャンなど連携が必要な場合は、手動でスキャンを実施するか、機器を固定して自動でスキャンを実施するかなど、設備の稼働状況や業務内容を確認し連携方法をお客様と相談の上、ご提案しています。
小規模なテーマから段階的に導入する
費用対効果を確認したい、システム導入が初めてなので小規模から実績を見てみたい、導入後のイメージが沸かない等システム導入にはさまざまな課題があります。
そのため弊社としては限定的で小規模、他の業務に影響を及ぼさない部分からシステム導入を進め、段階的に各工程連携を実施するステップアップ単位での導入をご提案しています。
上海HSTが提供する半導体工場向けソリューション
上記で紹介した内容に合致する半導体工場向けの各種ソリューション説明と詳細記事のリンクを紹介します。
温湿度管理システム
温湿度センサーの複数設置が可能で設定した警告・警報の2段階の異常値を超えると、メールで自動通知します。24時間365日、自動でデータを収集できます。品質管理や監査対応に最適です。クリーンルームや薬液保管エリアの管理にも活用できます。
誤投入防止システム
異なる品番、指定ロット、材料投入優先順位の判断、指定投入のバッチ番号、投入ライン間違いなど投入作業で発生するヒューマンエラーを未然に防止します。品種数が多く材料照合が重要な半導体工場に適しています。
投入した材料の実績データはシステム内でデジタルデータとして保存され、トレーサビリティや社内・顧客向けの監査データに活用が期待できます。
トレーサビリティ管理システム
川上の材料倉庫から川下の製品倉庫まで在庫管理、秤量管理、投入管理、工程生産管理を同じパッケージシステムで連携し各工程のデータ実績を収集することで、トレーサビリティ管理を実現します。多工程でロット管理が求められる半導体工場に適しています。
MESによるトレーサビリティ管理システムの詳細記事はコチラから。
設備点検管理システム
設備別の点検報告書をタブレットで表示し選択、テンキー入力対応で手書き運用が廃止できます。未記入な必須項目は警告で表示し、点検箇所に問題があった場合は写真を撮影してお客様と共有が可能です。
作業完了後はお客様より電子サインをいただく仕組みのため、不正防止に活用できます。
また点検作業後の承認フローもシステムに含まれているので、ペーパーレスで現場点検から事務作業が完結し、次回作業の日程を事前にメールで通知し作業忘れを防ぎます。
在庫管理システム
ロット管理、先入先出管理、指定ロケーション保管指定などQRコードとハンディターミナルを使った在庫管理システムです。1ライセンスで複数ユーザーの利用が可能、材料・製品など複数箇所ある倉庫管理に対応している在庫管理システムです。
半導体工場のデジタル化は小規模な改善から始めよう
半導体工場では品質要求の高度化や人手不足への対応などを背景に、現場のデジタル化は今後さらに重要になると考えられます。
しかし、大規模なシステムを一度に導入する必要はありません。温湿度管理や設備点検、誤投入防止、在庫管理など、現場の課題が大きい業務から段階的にデジタル化を進めることで、品質向上や作業効率化を実現できます。
上海HSTでは、お客様の現場課題や運用方法に合わせた最適なシステムをご提案しています。半導体工場のデジタル化をご検討の際は、お気軽にご相談ください。