市場競争が激しく急速にDX化が進む中国の製造業では安定稼働、コスト削減、業務品質の均一化、製造現場の人手不足の解消を目指し庫内業務の自動化が進められています。

自動化の一環として自動倉庫やAGV・AMRの導入案件が年々増えていますが、自動倉庫とAMRなど設備連携が必要なDX運用には「WCS」と呼ばれる倉庫制御システムが欠かせません。

「WCS」は”Warehouse Control System:倉庫制御システム”の略称で、自動倉庫やAGVの連携の橋渡しを行う重要な制御システムとなっています。

どうして自動倉庫の導入やAGV・AMR導入だけでは不十分なのか?「自動化」と「全自動化」の違い、商談時の注意事項を含めてご紹介したいと思います。

自動倉庫やAGV・AMRだけでは実現できない“真の自動化”

もし自動倉庫とAGVやAMRを導入して「自動化」を実現したいと、最終的な導入イメージを思い描いた場合、人を介さずに自動倉庫の搬送口にAGVが自動的に移動し、搬送口から出てきた保管品を受け取り、指定の場所まで搬送する。このような運用イメージが理想ではないでしょうか?

このような運用を実現するには「自動倉庫」と「AGV」を連携する「別の仕組み」が必要になります。この仕組みが「WCS」と呼ばれる部分になります。

WCSでしか実現できない“倉庫全体最適化”とは?


上図は、WCS(倉庫制御システム)が自動倉庫、AMR、充填機、ラベラー、包装機など多様な工場設備と連携し、上位のERP/MESシステムとスムーズにデータ連携を行う構成イメージ図となります。

Spark-WMS」は在庫管理を司り、「Spark-WCS」は現場のハードウェアと直接通信・制御する役割を持ちます。WCSがあることで、搬送指示を人手に頼る“半自動”から脱却し、真の意味でのフルオートメーション物流が実現されます。

「WCS」は全自動化に関係するシステム

「WCS」は庫内の全自動化に密接な関係があるシステムで、WCSを通じて「上位システム」や「自動倉庫」、「AGV/AMR」、「その他の各設備」のデータ制御やデータ連携を行います。

先に触れた自動倉庫からの出庫に併せて、搬送口にAGVが移動して出庫併せて積載し、指定の場所に搬送するためには、この「WCS」による指示や設備間の制御が必要になります。

WCSを導入すると一連の流れに人の仲介が不要となり、設備同士の連携で作業が完結されるため、業務の全自動化が達成されます。

どうして導入検討の時点で全自動化を達成するための課題が解決できないのでしょうか。それは商談の進め方や各メーカーの責任の所在、エンドユーザーの経験値など「自動化を進めるための落とし穴」が潜んでいるからです。

DX化の裏に潜む“中国工場の落とし穴”を避けるには?

エンドユーザーとマテハンメーカーの直接取り引き

マテリアルハンドリング(マテハン)メーカー様との直接商談は自動倉庫やAGV・AMR単体での「自動化」の実現がセールスポイントとなり、設備単体での運用は「自動化」が達成されるも、設備同士の連携や自動倉庫内の細かい運用方法、上位システム連携が実現できません。

上位システム連携が出来ない理由として、自動倉庫メーカー側よりお客様の上位システム連携のサービスとして「インターフェース」や「中間ファイル(中間テーブル)」の提供が多く、連携のためには開発スキルがあるエンジニアの存在が不可欠です。

エンドユーザー側でシステム開発スキルがあるスタッフが存在すれば対応は可能ですが、日本と違い中国では業務内容を熟知し、プログラミング経験を持つ社内SEが勤務する文化がなく、そのため上位システム連携の実現が難しい状況となっています。

そのため設備単体の自動化は達成されるも設備連携による全自動化は達成されません

【ポイント】
・設備メーカーは担当となる作業部分の自動化のみ提示
・エンドユーザーが全自動化にWCSが必須と知らない
・エンドユーザーに開発スキルのあるエンジニアが不在

エンドユーザーと商社を通じたお取引

商社様を窓口とした自動倉庫やAMR単体または自動倉庫とAMRを組み合わせた導入は、商流は一元化が可能となり契約などに関してはシンプルな構図になりますが、マテハンメーカーと直接商談時と同じく「設備間同士の全自動化」の問題が残っています。

商社側は全体案件の取りまとめは得意であるものの自動倉庫やAMR、その他設備の全自動化を実現させる専門的な業務知識やプログラミング開発スキルがないためです。

そのため設備単体は「自動化」を実現できますが、業務全体となると「半自動化」となってしまいます。

【ポイント】
・商社は各設備メーカーを取りまとめるがWCSが必須と知らない
・設備メーカーは担当となる作業部分の自動化のみ提示
・エンドユーザーが全自動化にWCSが必須と知らない
・エンドユーザーに開発スキルのあるエンジニアが不在

エンドユーザーと弊社&マテハンメーカーを通じたお取引

弊社対応の場合は、ご提案の初期段階から全自動化を含めた案内をしています。

エンドユーザー様の希望する運用内容をヒアリングして、業務全体で導入が必要となる設備機器をマテハンメーカー様と共にご提案をしています。

全自動化が必須の場合、弊社のようなシステム開発会社が設備連携の開発が必要となる点をエンドユーザー様にご説明をしております。

そのためマテハンメーカー様が現場で確認する自動倉庫の収容キャパ確認や図面の提出以外に、各設備機器がWCS(倉庫制御システム)のデータ連携に対応可能かの確認、上位システムの有無、上位システム連携必須の可否、必須時は受け取るデータの内容、自動倉庫内で管理すべき情報と業務フローの確認、制御実施に伴うイレギュラー発生時の対象方法などシステム目線での設備連携の確認しご提示しております。

【ポイント】
・商談の初期段階からWCSの重要性をご提示
・マテハンメーカーは設備メーカーの取りまとめと、WCS連携可否判断
・設備運用以外に上位システムや業務フロー中心の運用確認を実施
・WCSや各設備、上位システムとのデータ連携を弊社が開発担当

真のスマート物流の鍵は“現場制御とITの橋渡し”

本文では、どうしてAGVやAMR導入だけでは自動化が不十分なのかについて、また弊社の設備機器との連携開発の紹介でした。

単独での自動化の達成が目標だった場合は、今回のような設備連携は不要ですが、各設備でスタッフが必要となります。そのため長い目で見ると、可能な限り少人数での運用が理想的かも知れません。

また今回自動倉庫とAGV・AMRを中心に説明を実施しましたが、製品倉庫の自動化の場合は、ストレッチフィルム包装機、自動ラベル貼り付け機(オートラベラー)などの設備機器との連携も必要になり、弊社はこれらの設備機器との連携実績がございます。

お客様が何処までの自動化を目指すかによって、弊社からヒアリングとご提案を提出しております。なお別記事では上位システム連携の事例や設備導入の事例などをご紹介したいと思います。

倉庫業務の自動化を検討している中国に進出している企業様、お気軽にお問い合わせください。

3分で完了します。お問い合わせはコチラから